役者・加藤睦望は自由だ
彼女が演技中
何をしでかすかは予測不能
何せ「よーい、スタート!」の声とともに
彼女はどこかへ飛んでいってしまう
広角レンズ(※)を使用した引いた絵でも
収まらないほど自由奔放に動き回る
カメラの後ろ側に回り込もうが
物陰に隠れて見えなくなろうが
監督の声が届かないほど遠くへ行こうが
おかまいなしに演じ続ける
こんな自由な役者は
今まで見たことがない
今回彼女が演じたのは
障害を抱えた少女だったが
リアルに演じられる人がいるのだろうか
そんな心配の中
オーディションで出会ったのが
彼女だった
面談をしていくと
彼女は障害者支援施設で働いており
その障害を抱えた人たちと
たくさん触れ合ってきていることが分かる
彼女以上の適任はいなかった
こうしたキャラクターは
ともするとステレオタイプに
陥ってしまいがちだが
彼女はちゃんとひとりの人として演じた
障害について私は
強力な個性として演じて欲しいと話したが
彼女はそれを非常によく理解してくれた
教員時代に特別支援学級を
6年間担任した私が見ても
彼女のおかげで
自然で愛らしいキャラクターが
生まれたと思っている
監督 岩松あきら
※広角レンズ:肉眼より広い範囲(角度)を撮影できるレンズ。
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